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景山筍吉俳句集 ![]()
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その敬虔なるクリスチャンとして

〔景山筍吉(かげやま・じゅんきち)〕本名、凖吉。
京都市生。1899(明治32)・3・15〜1979(昭和54)・7・23。東大経済学部卒業。逓信省。藤倉化成且ミ長。ご夫妻ご家族共々、敬虔なカトリック信者として知られる。俳句は友人のすすめで始め高浜虚子に師事。中村草田男夫妻の仲人。「若葉」同人。「ホトトギス」同人。昭和30年「草紅葉」を創刊主宰。
・年譜
1899(明治32)年3月15日 京都府京都市上京区河原町に生まれる。
1923(大正12)年 東京帝国大学経済学部卒業。逓信省に入る。
1929(昭和4)年 俳句を松藤夏山および富安風生に師事。
1930(昭和5)年 東大俳句会に入会。以来高浜虚子の指導を受ける。
1935(昭和10)年12月 自宅にて中村草田男氏と福田弘一氏次女「直子」とを見合いさせる。
1936(昭和11)2月3日 九段の軍人会館にて、中村草田男・直子夫妻の婚儀媒酌人を務める。
1942(昭和17)年 逓信省管理局長退職。
1953年(昭和28)5月 第一句集「熱燗」:若葉社 刊行。
1954(昭和29)年 第二句集「萩叢」刊行。
1955年(昭和30)9月 第三句集「虹」:中央出版社 刊行。
1955(昭和30)年10月 「草紅葉」を創刊、主宰する。
1963(昭和38)年 藤倉化成且ミ長。
1965(昭和40) 第13回・交通文化賞受賞。藤倉化成椛゙任。
1969(昭和44)年 草樹会第一回南原賞受賞。
1971(昭和46)年 俳人協会評議員となる。
1976年(昭和51)6月 第四句集「マリア賛歌」:草紅葉会 刊行。
1978(昭和53)年10月 胃潰瘍手術を受ける。
1979(昭和54)年7月23日 心不全のため永眠。満80歳。
1979(昭和54)年8月22日 企画中の第五句集「白鷺」:草紅葉社 刊行。遺句集となる。
1980(昭和55)年3月 編著・「キリスト教歳時記(付録・キリスト教俳句の題材)」:サンパウロ社・発売、中央出版社。
熱燗や性相反し相許し
キリストのみ名に縋りて老の春
元旦の燭をマリアに奉る
老妻と追悼ミサへ三日はや
給油受けし老婆日々よし日脚伸ぶ
風花やチャーチ口門広く開け
訪れしミッション・スクール羽子日和
元始(はじめ)に天地創らると読み初む
十字切り寒卵受く伝道婦
植村忌俳友哉哉と梅に酌む
寒灯明日は懺悔をせねばならず
初ミサやヨゼフに白き梅を供し
成人の日の文机のマリアの絵
聖堂のイコンイコンに春の燭
早春の蝋涙長きマリアの燭
土手焼に鳴るはお告げの昼の鐘
修院の冷えし聖堂の致命際
右近忌や梅の蕾の未だ固く
リデル忌インド救癩に寄附若干
バレンタインの日なり山妻ピアノ弾く
四旬節大方過ぎぬ蕗の薹
紅梅にかしづくマリア燈籠かな
磔像のあたり最も草萌ゆる
キリシタン灯籠と伝ふ下萌ゆる
大聖堂大神学校と霞みけり
クルス下げ天草乙女春田打つ
日本好き目刺が好きで宣教す
雛壇の上にかかれる像マリア
羽赤き受胎告知の大天使
春の燭受胎告知の画に遠く
聖櫃の布も紫四旬節
干大根細く細りて受難節
七曜の小旗を振れば雉叫び
焼却炉夜も煙上ぐ受難週
天草の小さき聖堂の聖木曜
ピラト照らす聖木曜の赤き月
異教とて敬して過ぎぬ彼岸花
秘そと断つ聖金曜の昼の食
妻と見る聖金曜の大夕焼け
花冷えの聖土曜日の夜のミサ
玻璃越の春日今射す踏絵かな
ミサの鐘鳴ると舟急く春の潮
囀りや初誓願の式はじまる
丘の上桜の中のトラピスト
桜草の鉢を抱えて復活祭の娘
召命の長女よ次女よ復活祭
原城の跡と萌ゆる名草の芽る
賀川忌と「死線を越えて」を読み返す
リラの窓開けて修女のタイプ打つ
応対のしづかなる修士松の花
殉教の丘と伝えて麦の秋
クルス真白の卯の花腐ち異人墓地
「千利久或いは耶蘇」と新茶汲む
豆飯や田舎司祭は夜も多忙
豆飯に十字を切りて伝道婦
薔薇に雨使徒に聖霊降臨す
讃歌天に届き聖霊降臨す
ガブリエル天使の名持つ紅薔薇
教会の芭蕉玉巻き昇天際
聖父(ちち)と聖子(こ)と御霊(みたま)にすがる墓の春
梅雨寒や神父不在の司祭館
細き燭二つ灯りて梅雨のミサ
灯を消して夜の祈りや蚊遣香
コンタツの柱にかかる蚊火の宿
ロザリオを繰るや月下の籐寝椅子
蝸牛や吾が負うクルス軽からず
蝿生る神意は測ること難し
悪魔いま吾に囁く蟻地獄
主は天に昇られ蛇は大地這う
キリシタン処刑跡なり蛇の衣
「靴紐を解くだに耐えず」の語涼し
就中ステンド・グラスの藍涼し
炎天を訪ねくれたる修女かな
時非なり吾は時待つ冷や奴
炎天下隋ふ使徒も主も跣足
日焼して農婦の如き伝道婦
虫干の要なき祈祷書ミサ典書
御聖体享くべくベッドに香水を
夕焼けや「黄金の日日」のフロイス祭
日本の端居たのしむ神父かな
端居より父来てマリア連祷す
サングラス外してミサに侍りをり
殉教の最初の使徒に大夕焼け
麸(ふ)を持ちて義母来るアンナ祭
ニコライの鐘が聞こえる毛虫焼く
髪切虫ギギとわが罪咎むごと
腹当や男のやうな女の子
紙魚走る天草版の耶蘇要理
神父読む聖務日課や紅蜀葵
銀河濃しマリアの八月十五日
ガラシア忌や大阪城は夕焼裡
言い伝ふマリア観音赤のまま
秋立つと一番ミサへ急ぎけり
修院へ入る娘と仰ぐ天の川
銀漢や生死は主のみ司る
ロザリオの月の十月夜長し
爽やかにマリア讃美の稿起す
露涼し寝墓に彫りし聖十字
尖塔のクルス全き良夜かな
今朝の露美しマリアの誕生日
バイブルはむつかしき昼の虫鳴ける
芋虫に芋の葉賜ふ神に謝す
死者ミサや神羔誦の身に入みて
秋灯に読むべき書あり聖書あり
金祝の外人司祭へ菊枕
チャペルの鐘近くに聞こゆ秋の雨
フランシスコ祭と小鳥にパン屑を
父母囲みロザリオ月の夜に祈る
千振を干し聖ルカの忌日なり
天高し王たるクリストいざ祝かむ
鵙高音聖体讃歌高昇る
時雨れ行く修女二人に恩寵あれ
泥鰌掘る受難のイエスの如と汚れ
異邦人にイエスを説きて木の葉髪
深秋の奉教死者のミサの燭
ほつほつと木の実の落ちて死者の月
わが宗旨自害認めずと行長忌
七五三のミサ擧ぐ神父はカナダ人
闇汁へ神学生を招待す
鼻隆き南蛮屏風の宣教師
炉の妻の膝の公教要理かな
ミサ挙ぐる神父風邪気味侍者も亦
咳ぶきて奉教死者のミサに侍し
着膨れて深夜のおミサの末席に
聖菓頒け夫新教妻旧教
いと小さきピアノの上の聖誕樹
待降節迎へ無病の大家族
銀杏散り修院待降節に入る
修女等の葛湯もて祝ぐ聖胎節
社会鍋良きことありて奮発す
夜々たのしクリスマス・カード炉辺に書き
クリスマス・イヴの灯ともる草家かな
神父老い信者のわれ老いクリスマス
クリスマス前に為さねばならぬこと
泡盛を勧めて那覇の長者たり

◎監修:つぶやく堂やんま:2000・1・1